こんにちは、湯けむり散歩人です。つる舞う形の群馬県で、定年後ののんびりとした時間を温泉と共に過ごしています。群馬に住んで30年、この地のお湯に癒やされ続けてきましたが、調べれば調べるほど温泉の奥深さに驚かされる毎日です。
今回は、最近話題の「温泉むすめ」の話題から、ちょっとアカデミックな「名湯の条件」についてお話ししたいと思います。皆さんは、歴史のある古い温泉地に行くと「なんだかお湯の力が強い気がするな」と感じたことはありませんか?
実はそれ、気のせいではないんです。江戸時代以前から続く温泉には、現代の技術では再現できない「自然の理」が隠されているんですよ。
この記事の目次
温泉むすめと赤倉温泉、そして温泉ソムリエの深い関係
まず触れておきたいのが、新潟県妙高高原温泉郷にある赤倉温泉です。ここは知る人ぞ知る「温泉ソムリエ」発祥の地。そんな由緒正しき場所に誕生したのが、温泉むすめの「赤倉茅咲」ちゃんです。
彼女の存在をきっかけに、若い世代が温泉の泉質や歴史に興味を持つのは素晴らしいことですよね。赤倉温泉自体、江戸時代に開湯された非常に歴史のあるお湯ですが、こうした「歴史ある温泉地」こそが、実は最高の泉質を誇る条件を備えているんです。
名湯の条件は「自然湧出」にあり
なぜ歴史の古い温泉地には名湯が多いのか。その最大の理由は、明治時代以前の「温泉の出かた」にあります。
現代では機械で深く掘削して温泉を汲み上げることが一般的ですが、明治時代に「上総(かずさ)掘り」という技術が登場する前、温泉はすべて自然湧出でした。つまり、自らの力で地上に湧き出してきたお湯だけが「温泉」として利用されていたのです。
天地自然の理にかなった循環システム
自然湧出の温泉は、気が遠くなるような時間をかけて作られます。雨や雪が地中に染み込み、マグマの熱と出会って温められ、成分をたっぷり取り込んでから再び地上へ戻ってくる。この「自然循環システム」によって湧き出すお湯は、地下に染み込んだ分だけが押し出されるため、成分が非常に安定しており、枯れることがほとんどありません。
江戸時代以前から続く温泉地は、まさにこの「地球の呼吸」とも言える自然の恵みをそのまま受けている場所。だからこそ、お湯の質が圧倒的に高く、多くの人を虜にする名湯であり続けているんですね。
歴史的人物が愛し、見出した名湯たち
情報も移動手段も限られていた時代、名湯を見出し、その恩恵を授かることができたのは時の権力者や修行者たちでした。
天皇の行幸と武将の隠し湯
例えば、兵庫県の有馬温泉は舒明天皇が行幸された記録が残る日本最古級の温泉です。また、戦国時代になると、武田信玄が傷ついた兵を癒やすために利用した「信玄の隠し湯(下部温泉や渋温泉など)」のように、武将たちが戦略的に名湯を保護しました。彼らは経験的に、どの温泉が最も治癒力が高いかを知っていたのでしょう。
高僧が開いた「聖域」としての温泉
また、空海(弘法大師)や行基といった有名な僧侶が発見したという伝説を持つ温泉も全国に数多くあります。かつて、激しく熱気や硫黄の香りが立ち込める源泉地は「地獄」と呼ばれ、一般の人は恐れて近づきませんでした。そんな険しい霊山へ修行に入ることができた高僧たちだからこそ、厳しい自然の中に隠された名湯を見出すことができたのです。
江戸時代以前から続く、全国の名湯リスト
ここで、江戸時代以前から愛され続けている主な温泉地を挙げてみましょう。皆さんの近くや、次の旅の目的地にしたい場所はありますか?
- 群馬県: 草津温泉、万座温泉、伊香保温泉、四万温泉
- 青森県: 恐山温泉
- 宮城県: 鳴子温泉郷、秋保温泉
- 山形県: 肘折温泉、蔵王温泉
- 福島県: いわき湯本温泉
- 栃木県: 那須湯本温泉、塩原温泉郷
- 神奈川県: 箱根温泉郷、湯河原温泉
- 静岡県: 熱海温泉、修善寺温泉
- 長野県: 野沢温泉、湯田中渋温泉郷、別所温泉
- 石川県: 粟津温泉、山代温泉、山中温泉
- 兵庫県: 有馬温泉、城崎温泉、湯村温泉
- 愛媛県: 道後温泉
- 大分県: 別府温泉郷、長湯温泉
特に我が群馬県の草津・伊香保・四万といった顔ぶれを見ると、その歴史の重みとお湯の質の高さに改めて納得してしまいますね。
究極の「純温泉」を求めて
最近では、こうした歴史ある名湯の中でも、特に源泉かけ流しにこだわり、塩素消毒を一切行わない「オーガニックな温泉」を純温泉と呼ぶ動きもあります。自然湧出の恵みをそのままに、何も加えない贅沢。これこそが、私たちが温泉に求める究極の癒やしなのかもしれません。
もし温泉の歴史についてもっと詳しく知りたくなったら、石川理夫さんの著書『温泉の日本史』を読んでみるのがおすすめです。一冊読み終える頃には、いつもの露天風呂が全く違った景色に見えてくるはずですよ。
歴史ある温泉地には、単なるレジャー以上の「地球のエネルギー」が満ちています。
皆さんも次のお休みには、江戸時代から、あるいはそれ以前からこんこんと湧き続ける名湯を訪ねてみてはいかがでしょうか。
湯けむりの向こう側に、きっと新しい発見があるはずです。
それでは、皆さまの旅が素晴らしいものになりますように。湯けむり散歩人でした。