温泉に入るとき、みなさんは「泉質」を気にしますか?
「硫黄泉」「炭酸水素塩泉」「塩化物泉」……宿の案内板や温泉分析書にズラリと並ぶ文字。
なんとなく目に入るけれど、正直よくわからないまま「気持ちいいからいいか」で入ってしまう方も多いのではないでしょうか。
実は私もそのひとりでした。でも温泉めぐりを重ねるうちに、「泉質名に書かれていない効果が隠れている」という話を知って、温泉の見方がガラリと変わったんです。
今日はそんな「温泉の隠れ効果」のお話を、温泉通として感じてきたことも交えながらお届けします。
泉質名は「規定値をクリアした成分」だけが書かれる
温泉施設に行くと、浴室の壁や脱衣所に「温泉分析書」が貼ってあることがありますよね。あの細かい数字がびっしり並んだやつです。
あれ、実はすごく大事な情報が詰まっていて、泉質名というのは「規定値を超えた成分だけ」が名前に反映される仕組みになっているんです。
たとえば「塩化物泉」「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」といった塩類泉は、その成分が全体の20ミリバル%以上含まれていないと泉質名には入ってこない。
つまり、18ミリバル%の炭酸水素イオンが含まれていても、泉質名には「炭酸水素塩泉」とは書かれない。でも実際にはその成分はしっかり溶け込んでいるわけで……。
「隠れ泉質」って何?知ると温泉の見方が変わる
この「規定値にわずかに届かない成分」のことを、温泉の世界では「隠れ泉質」と呼ぶことがあります。
たとえば「隠れ炭酸水素塩泉」。
炭酸水素イオンには肌の角質を柔らかくする作用があって、いわゆる「ツルツル&美白効果」が期待できると言われています。規定値の20ミリバル%に届かなくても、18ミリバル%くらい含まれていれば、肌への作用はちゃんとあるはず。
「隠れ含鉄泉」も同じで、含鉄泉の規定値は「総鉄20mg/kg以上」ですが、18mg/kgくらいあれば鉄分の性質はしっかり持っていると考えられます。
主な「隠れ泉質」の目安をまとめるとこんな感じです。
| 泉質名 | 規定値(1kgあたり) |
|---|---|
| 酸性泉 | 水素イオン 1mg以上 |
| 硫黄泉 | 総硫黄 2mg以上 |
| 二酸化炭素泉 | 遊離二酸化炭素 1,000mg以上 |
| 放射能泉 | ラドン 8.25マッヘ以上 |
| 含鉄泉 | 総鉄 20mg以上 |
| 含よう素泉 | よう化物イオン 10mg以上 |
この規定値を「少し下回る程度」の数値が分析書に書かれていたら、それは「隠れ〇〇泉」と考えてみてください。
次に温泉に行ったとき、脱衣所の分析書をちょっと覗いてみる。それだけで、その温泉の「本当の顔」が見えてくるかもしれません。
「信じて入る」ことも、温泉効果のひとつ
ここで面白い話をひとつ。
「隠れ泉質」であっても、その効果があると信じて入浴することで、温泉の効果がより引き出される——そんなふうに言われています。
プラセボ効果、と言ってしまえばそれまでかもしれません。でも私はこれ、すごく納得できるんですよね。
「このお湯は肌にいいんだ」と思って入るのと、「どうせ単純温泉だし…」と思って入るのとでは、同じお湯でも感じ方がまるで違う。気持ちの持ちようって、体の感じ方にも確実に影響するんだと思います。
青森市の住宅街に佇む「出町温泉」で感じたこと
この「隠れ泉質」の話を知ってから、私が思い出したのが青森市の「出町温泉」のことです。
青森市の住宅街にひっそりと佇む温泉銭湯で、観光地でもなんでもない。地元の方たちが日常的に通う、昔ながらの銭湯です。青森駅から徒歩だと30分ほどかかるので、車で行くのが現実的ですね。
泉質は「単純温泉」。でも、浴槽はひとつなのに仕切りで2つの湯船として使えるようになっていて、温度が違う。そのシンプルさがなんとも言えず心地よくて。
「単純温泉か……」と思いながら入ったのですが、上がったあとの肌のしっとり感がなかなかのもので。
「もしかして隠れ炭酸水素塩泉なのかな」なんて想像しながら浸かっていたら、なんだかいつも以上に体がほぐれた気がしました(笑)。
青森県といえば、温泉資源がとにかく豊富で、街中の銭湯が温泉というのが当たり前の場所。
これって鹿児島県と似ているんですよね。海岸線が長くて、高い山がなくて、温泉があちこちに湧いている。違いは「雪が降るか、火山灰が降るか」くらい(笑)。
そういう土地の温泉文化って、やっぱり独特の魅力があります。観光地の温泉とは違う、生活に根ざした「本物の温泉」という感じがして、私はこういう場所がたまらなく好きです。
青森市周辺の温泉宿も、ぜひ候補に
出町温泉のような銭湯めぐりと合わせて、青森市周辺の温泉宿に泊まるのもおすすめです。
浅虫温泉や八甲田エリアには、それぞれ個性的な宿が点在しています。
| 宿名 | 所在地 | 予約 |
|---|---|---|
| 浅虫温泉 津軽藩本陣の宿 旅館柳の湯 | 青森県青森市大字浅虫字山下236 | 楽天トラベルで宿泊プランを見る |
| 八甲田城ヶ倉温泉 ホテル城ヶ倉 | 青森県青森市荒川八甲田山中 | 楽天トラベルで宿泊プランを見る |
| 浅虫温泉 宿屋つばき | 青森県青森市浅虫蛍谷25 | 楽天トラベルで宿泊プランを見る |
まとめ:温泉分析書は「宝の地図」だった
今回お伝えしたかったのは、ひとつのことです。
泉質名だけで温泉を判断するのはもったいない。
分析書に書かれた数字をちょっと眺めてみると、表に出てこない「隠れた効果」が見えてくることがある。
そして「このお湯にはこんな成分が入っているんだ」と知って入ると、同じお湯でもなんだか体への染み込み方が違う気がする。
温泉通として長年温泉をめぐってきた私が確信しているのは、「温泉は知識と体験が合わさったとき、最大の楽しみになる」ということ。
次の温泉旅では、ぜひ脱衣所の分析書を一度じっくり眺めてみてください。きっと、そのお湯が少し違って見えてくるはずです。